腹膜偽粘液腫とは

医療関係者・より詳しく知りたい方は「腹膜偽粘液腫の治療体系」「腹膜播種治療の世界の現状」をご覧ください。

どんな病気?

腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ pseudomyxoma peritonei ; PMP)とは、お腹の臓器のいずれかで粘液を出す腫瘍細胞が発生して、その腫瘍細胞が増えながら粘液をどんどん出すことで原発巣(げんぱつそう:最初に腫瘍が発生したところ)が破れてしまい、腹腔内に粘液と腫瘍細胞がまき散らされる、いわゆる腹膜播種(ふくまくはしゅ)の状態になる疾患です。

原因はまだわかっていません。また、初発年齢は、50歳前後の女性が多く、しかし、性別年齢関係なく発症します。

原発巣の多くは虫垂ですが(90%)、女性なら卵巣の場合もあり(7%)、その他の原発巣も少数ながらあります。

日本では100万人に1.5人くらいの割合で発生する大変まれな疾患ですが、私たち腹膜偽粘液腫患者支援の会には、同じ病気になった仲間たちがたくさんいます。

どんな症状?

粘液状の腹水で、お腹が膨れていきます。進行の具合には個人差がありますが、ゆっくりと進むことが多く、気づかないまま過ごしているうちに、お腹の中に腫瘍細胞の入った腹水が充満してしまいます。

放置しているとお腹がどんどん膨れるだけでなく、粘液が固形化して大きな塊となり、臓器を圧迫していきます。その後、腸閉塞をともない栄養失調などで、いずれ生命維持ができなくなります。

治療法について

「腹膜偽粘液腫と診断されたが、医師から治療法がないと言われた。治療の情報がほしい……」
以前から、このような問い合わせが私たちの会に寄せられています。また最近では、「主治医から専門の病院を紹介されたのだが……」という相談も増えてきました。

腹膜偽粘液腫を含む腹膜播種は、治療が難しい疾患です。腹膜偽粘液腫の治療も、これまであまり効果がないと言われてきた化学療法や、症状を抑えるためだけの不完全な手術が行われるのみのことが多々ありました。

しかし今では、治癒を目指した積極的な治療法を行う医師と専門施設が存在します。

その積極的な治療法とは、目に見える腫瘍を徹底的に切除することです。そして手術中に温めた抗がん剤をお腹の中に入れる腹腔内温熱化学療法(Hyperthermic Intraoperative intraperitoneal chemotherapy: HIPEC)等を行います。これに加え、状態により術前術後に化学療法を組み合わせながら患者のケアをしていく包括的な治療法が、最新の治療法となっています。
この包括的治療等、腹膜偽粘液腫の積極的な治療を受けるには、この治療に特化したスキルを持つ医師と医療スタッフが揃う専門施設に行かなければなりません。
現在、当会が把握している専門施設は以下のとおりです。

  • 岸和田徳洲会病院 腹膜播種センター(大阪府)
  • 草津総合病院 腹膜播種センター(滋賀県)
  • 市立岸和田市民病院 外科(大阪府)
  • 福井大学 第一外科、産科婦人科、がん診療推進センター(福井県)

上記施設の腹膜偽粘液腫(および腹膜播種)の治療法について、2019年の当会主催講演会でご説明いただきました資料を掲示します。
(各画面をクリックすると、PDFの資料が開きます。)


理解を深めるために、講演内容の各資料から、いくつかの内容について抽出したものが下の表です。しかし、この表にあなたにとって大事な情報がない可能性があります。ぜひとも、それぞれの先生方のスライドに目を通してください。そして、これらの施設で実際に診察を受け、実際にどんな治療となるか、先生に尋ねると良いでしょう(治療法は日々進化します)。そのうえで、あなたやあなたの大切な人が望むかたちの治療はどれなのかを決めましょう。

※内容は2019年11月時点のものです。治療法等、変わっていきますので、先生に確認してください。

岸和田徳洲会病院
(米村豊先生発表)
草津総合病院
(水本明良先生発表)
岸和田市民病院
(鍛利幸先生発表)
福井大学医学部
(森川充洋先生発表)
腹膜偽粘液腫の手術数(累積) 1074例
(2002~2018年12月)
1077例
(2007年11月~2019年6月)
鍛先生のこれまでの症例として、
55例?(1998~2018年)
26例
(2000~2018年)
腹膜偽粘液腫に対する治療法(詳しくは各施設での診療時にお尋ねください) PCIスコアが0=洗浄(場合によって温熱化学療法)→経過観察。

PCIスコアが1~4=洗浄・温熱化学療法・IPポート→IP化学療法→経過観察。

PCIスコアが5以上=(洗浄・温熱化学療法・IPポート→IP化学療法)→完全切除手術+温熱化学療法

腹膜切除・臓器切除+洗浄 腹膜切除・臓器切除+腹腔内温熱化学療法 臓器切除(腫瘍減量手術)+腹腔内温熱化学療法
腹膜偽粘液腫患者の腫瘍量平均(PCI中央値) PCI 31 PCI 16(3-31)
腹膜偽粘液腫の手術での完全切除率 654例(61%) 440例(64%) 45例(82%) 73%
腹膜偽粘液腫の治療後生存率(5年、10年) (5年生存率)84%、
(10年生存率)72%
(5年生存率)65%、
(10年生存率)57%
(5年生存率)61.5%、
(10年生存率)47.1%
(5年生存率)78.9%
腹膜偽粘液腫患者の手術時年齢(歳) 59歳±13歳 65歳(38~86歳) 62.5歳(31~74歳)
腹膜偽粘液腫の治療の術後合併症 1035例中、
Grade3=118例(11%)、
Grade4=113例(11%)、
Grade5=25例(2.4%)
中等症以上=15例(27%)、
死亡=2例(3%)
Grade3以上=15.3%(肺水腫1例、徐脈1例、近位尿細管障害1例、縫合不全1例)
死亡=0%
腹膜偽粘液腫の入院日数平均 31日(10~174日) 21日(14~85日)
腹膜偽粘液腫以外の腹膜播種治療症例 胃癌、大腸癌、卵巣癌、肝・胆・膵癌、子宮癌、中皮腫、小腸癌、肉腫、カルチノイド、GIST、顆粒細胞腫 胃癌、大腸癌、卵巣癌、腹膜癌、中皮腫、その他
備考、まとめ等 (岸和田徳洲会病院、草津総合病院とも腹膜播種センター長が米村豊先生。静岡県の池田病院とも連携しており、池田病院では手術以外の診療が受けられる。) 現在の治療方針
1)完全切除が治療の目標。
2)安全な手術が原則。
3)高齢者、特に体力の低下した患者では、過大な切除にならないように注意する。
4)(巨大な腹膜偽粘液腫では積極的な切除が予後を改善するため)腫瘍の大きい場合にも完全切除を目指す。再発に対しても積極的に切除する。
腹腔内温熱化学療法の影響で集中治療を要するが、臓器温存により退院後の生活の質は保てている。
DPAM、PMCA-Iに関しては概ね治癒が得られている。
PMCAに関しては、再発している患者が多いものの、比較的長期の間、腫瘍と共存して生活している。
※内容は2019年11月の当会講演会から抜粋したもの。治療法等、変わっていくことをご了承ください。
《略語説明 〜理解を助けるために〜》
n 人数(number)
NR 正常範囲(Normal Range)
MST 50%生存期間(Median Survival Time)
P値 統計で、その結果が得られる確率
NS 統計で、有意ではないこと(Not Significant)
CC CC-0 肉眼的に見て腫瘍の遺残なし
CC-1 直径 2.5mm 以下の腫瘍が遺残
CC-2 遺残した腫瘍の総直径が 2.5mm~25mm
CC-3 遺残腫瘍の総直径が 25mm 以上
PCI 腫瘍量を表す指数(Peritoneal Cancer Index)
Grade Grade1 正常な術後経過ではないが、治療を要さない(解熱薬、鎮痛薬等の治療含む)
Grade2 術後合併症で、薬での治療を要する(Grade 2までは、患者は心配しなくて良い範囲でしょう)
Grade3 術後合併症で、手術等の治療を要する
Grade4 生命を脅かす術後合併症
Grade5 死亡
5生 5年生存率
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